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#33 目覚め 2003.08
31話の続き…
沈痛な面持ちで、教壇に立つ八代
両手で口を塞ぎ、泣いている雛月加代
拳を握りしめ、歯を食いしばりながら悔しそうな表情で泣いているケンヤ。
同じく泣いている仲間たち(ヒロミ、カズ、オサム)
この時、八代がどのように伝えたのかは不明。
時は過ぎてゆく・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
中学生になったケンヤたち。
街頭で募金活動をするシーン(このシーンについては後に判明)
コンビニで働く佐知子(悟の母)
「君は自分が楽しんじゃいけないって考えてないか?
あまり無理するな。君が倒れたら元も子も無い。
たまに遊びに出たらどうだ?」と言う、元同僚・澤田の言葉通り
上野、美術館や公園をぶらぶらする佐知子。
家に帰る電車の中でふと思う。
「そういえば、いつか悟が言ってたっけ 上野には電車一本で行けるんだ
ホントだ・・・あの言葉は何だったんだべ・・・」
家で悟の写真(小学生の時仲間と撮ったやつ)を眺める佐知子。
悟が好きだったアニメソング(戦え!ワンダーガイ)のレコードを手にする。
その部屋には、ベッドに横たわり大人になっている悟の姿が。
アニメソングを流したまま台所に立つ佐知子。
ふと、悟の方を見る。
「おはよう 悟」佐知子の目から涙が零れ落ちる。
そこには、薄らと目を開いた悟が・・・
悟“目覚める”
#34 閉ざされた扉 2003.08~2004.02
【親愛なる友人 藤沼悟へ・Ⅰ】
悟。もしかするとこのファイルは君の今後の人生にとって
必要の無い物かもしれない。
けど、いつか君が自分の身に起こった出来事を知りたいと
思った時に役立つ事を願ってこれを記そうと思う。
君が「君自身の事件」に遭遇したのは
1988年(昭和63年)3月14日の事だ。
小学5年生(11歳)の君は、その日の放課後アイスホッケーの
観戦に行った柳原美里を追って、市内の若葉体育館へ向かった。
行き先の情報源は、この僕だ。
市営バスの運転手を最後に、その後の君の確かな
目撃情報は途絶えた。
僕も一緒に行くべきだったと今でも悔やんでいる。
君が発見されたのは市内にある川の上流で
先端から3分2程が水没したライトバンタイプの
車の助手席だ。時刻は18:30頃。
発見者はたまたま通りかかった女性の獣医師(30歳)だ。
現場から少し上流にある牧場に呼ばれた帰りで
本当に偶然だったそうだ。
川に落ちていた車の中を懐中電灯で照らすと
人の頭が動いたように見えたので、危険を承知で
無地に入ったが、頭のように見えたのはバスケットボールだった。
だがその行動のおかげで助手席に居た君を発見し
自分の車に戻り取って来たハサミで、固定されていた
シートベルト(警察が「殺人未遂事件」とした根拠)を切り救出した。
その時の君は心肺停止状態で、体温は推定28度未満。
生死の判別がつかない君に対して獣医師は救命活動を行った・。
牧場からの通報で警察、救急隊が到着したのは
発見からおよそ25分後。場所を考えると迅速だっと言える。
当時の気温は1℃、水温は4℃。
病院の医師によると水温の低さが体の小さな君を
救ったのだろうという事だ。酸素の供給が断たれる事で
人は「脳死」に至るが、それ以前に急速な低体温症により
脳が仮死状態に陥った(仮説)との事だ。
そうして君は15年もの長き眠りに就いた。
悟。君の言っていた「探偵ごっこ」が本当に「ごっこ」
じゃない事を皮肉にも君自身の体をもって証明する
形になってしまった。
小学5年のあの頃、君の行動に共感していたのは本当だが
「真犯人」の存在を僕が確信したのは、この時だったんだ。
悟の言う「真犯人」は実在した。
当時警察は車の持ち主、発見者、教員、父兄、体育館の
職員から出入りしていた業者まで広範囲の捜査を行ったが
「被疑者」を絞り込む事が出来なかった。
大きな理由はやはり「動機」が見当たらない事だったようだ。
僕は警察に「真犯人」に関する申し立てを行ってみたが
取りあってはもらえなかった。
(中略)
ただひとつ信じてもらえた事もあった。
僕はあの日も白鳥食品でひとり弁当用のコンテナを洗う
白鳥潤を見たんだ。僕の証言が彼の唯一のアリバイ証言になった。
これは悟、君のおかげだよ。
君の事件には「真犯人」特有の身代わりの犯人が
存在しない。その理由を僕はこう考えている。
「悟の存在が真犯人の歯車を狂わせたのだ」と。
必ず付け入る隙はある。
僕が必ず「真犯人」を追い詰めてやる。
「真犯人」を追い続ける事は僕の使命だと思っている。
(中略)
もう充分戦って、傷ついた心と体を癒している君を
揺さぶる行為をしてしまっているのかもしれない。
15年振りに目覚めた君を見て、僕は本当に嬉しかった。
涙が止まらなかったよ。
君が戻って来た事が何よりも嬉しいんだ。
おかえり 悟。
君の友 小林賢也
~悟の状態~
半年ほど前目覚めた時、耳はすぐに機能した。
しきりに僕の名前を呼ぶお母さんの声が聞えた。
返事をしようと思ったけど、口は動かず声が出なかった。
次に目覚めた時、「おはよう 悟」という
お母さんの声がした。
僕は目の奥が痛むのを我慢して目を開けた。
ここが病院である事、長い間眠っていた為体の機能が
衰えているだけだとお母さんが説明してくれた。
目覚めて間もなく、主治医の北村先生と、まばたきを利用して
Yes・No形式の質疑応答を繰り返した。
言われた通り眼球運動を続けて一週間、まだろくに見えなかったが
眼の痛みは消えた。
目覚めて二週間、首と手の指を少し動かせるようになっていた。
北村先生「驚きだ とても15年間眠っていたとは・・・」
悟は、この時初めて自分が15年も眠っていた事を知る。
(賢也からのファイルはまだ読んでいない)
僕が喋れるようになって4~5日経った頃、北村先生とお母さんが
神妙な顔つきで訊いてきた。
「君が眠りに就く前の事で、思い出せる一番新しい記憶は何かな?」
「お母さん 僕の笛はどこ?」
お母さんのホッとするような空気が伝わってきた。
それが最後の場面じゃない事くらい僕にだって判る。
この時初めて、自分の記憶の中に空白の時間がある事に気づいた。
その記憶は、固く閉ざされた扉に阻まれていた。
毎日この扉を開けようと試みたけれど
毎回、胸の痛みと共に失敗に終わった。
15年もの間毎日4時間かけて、お母さんは僕の体をケアし続けてくれた。
3年程前からは、目覚める日に備えEMSという装置を使い
関節、筋肉のケア。
小5の頃139㎝だった身長は169㎝になっていた。
五感がだいぶ回復してきた頃、二人の男が現れた。
ケンヤ(小林賢也)とヒロミ杉田広美だった。
ケンヤは弁護士、ヒロミは医師(インターン)になっていた。
その日はただ、雑談に終始した。
ケンヤは僕に何か訊ねたかったようだが
お母さんに何か言い含められていたようだ。
僕も訊きたい事はたくさんあったけど、お母さんが
僕の過去の話題を避けているようなので止めておいた。
ケンヤとヒロミが現れた二か月後、その女性が現れた。
産まれたばかりの赤ん坊を抱いて立っていたのは
雛月加代だった。、
ロクに会話もした事が無かった女子だったけど
幸せそうに笑う彼女を見て僕は思わず
「おめでとう 加代」と馴れ馴れしく声をかけていた。
とても嬉しくて嬉しくて涙が止まらなかった。
ロクに会話もした事が無かった女子、雛月加代・・・
この記憶は再上映(リバイバル)前の記憶ですね。